次に、スイッチが他のスイッチを次々に入れていく仕掛けを仮定する。いわゆる、ピタゴラ装置と呼ばれるものだね。この装置の過程部分全てを、目に見えない力に置き換えるとしよう。スタートとゴールだけは目に見えるが、その経路はわからない。
さて、本題だ。君の机に置いたスプーンは、実は目に見えないピタゴラ装置のゴールなんだ。そして今、スタートを切ったところだ。
……この通り、折れ曲がったね。過程は磁力だけじゃないよ。風かも知れないし、電流かも知れない。気づいていないだろうけど、恐らく君自身もその経路なんだ。
驚いているね。秘密はそれだけじゃない。このピタゴラ装置は、私が作ったものではないんだ。一瞬で作ったわけでも、昨晩からこの部屋に用意してもいない。ただ、君がスプーンに目を移したその瞬間、装置が出来上がった事に気づいただけだ。
種も仕掛けもあるけれど、私にわかるのはその瞬間が来た事のみ。誰が装置を作ったのかも、その瞬間を私に教えているのが何かも知らないんだ。